源氏物語を読む 蓬生 あらすじ

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15 蓬生 あらすじ

15.1 源氏の君が、須磨・明石で謹慎生活を送っていた頃、 都では人知れず嘆いていた女たちも多くいたのであった。 常陸の君(末摘花)は、父親王が亡くなってから後見する人もなく、思いがけない源氏の君の来訪で、わずかな援助を得て細々と暮らしていた。しかし、源氏が遠くへ去ってからは、世の一切が物憂く思われて援助も途絶えがちになり、あわれに寂しく過ごしていた。女房たちも里に帰ったり亡くなったりして、すっかり減ってしまった。
15.2 元々邸は荒れていて、狐の棲家になり、梟の声が朝夕不気味に聞こえ、木霊などけしからぬ物どもも現れた。受領たちのなかには、趣きあるものを好み、邸の木立や調度類に目をつけて、手放しませんかと打診してくる者もいて、女房たちのなかにはもっとましな邸に移ったらどうか進言する者もいたが、姫君は親が残してくれた邸を手放すなど、頑として受け付けないのであった。
15.3 姫の身辺を訪れる人はなく、兄の禅師の君だけは、京に出たときは立ち寄ったが、俗世を離れた聖であったので、処世のことは無頓着で、生い茂る草や葎を刈ることも思いつかなかった。八月には台風がきて、板張りの下屋が骨だけになったままなので、下人もいなくなった。ただ寝殿の奥だけは、昔風のしつらいのままであったが、塵がつもっても掃除をする人がいなかった。
15.4 日々のつれづれの慰めに、古歌や物語に特に関心があるわけではなかったが、時折取り出しては絵入りの物語を広げたりするのだった。父の教えを守り、世間は用心するものと思い、慎ましく暮らしていたのだった。
15.5 乳母の子が侍従をしていて、長年仕えていた。また姫君には、母方の姉妹にあたる叔母がいた。受領の妻に身を落としているのを大変気にして、見下されてると思っていた。娘たちがいたので、姫君を娘の使用人にしようとして誘うのだが、姫君は内気な性格もあって、頑として承諾しなかった。そのうち家の主人は大宰府の大弐に任命された。
15.6 源氏の君が帰京して、世間では上も下も喜びにわきたっていたが、姫君には他所事(よそごと)のようであった。連絡もなく月日がたった。 大弐の北の方は、大宰府へ一緒に来るよう再三説得していたが、姫君は頑として承知せず、調度品ひとつ処分することもなく、邸は荒れていったが、「わたしの果報が悪くて、忘れられたのであって、風の便りにも、わたしがこんなひどい状態であるのを聞きつければ、必ず訪れてくれるだろう」と、久しくお会いしていない君の来訪を信じて待っているのだった。
15.7 冬になり、法華八講が盛大に行われた。禅師の君も招じられて、帰りに宮家に寄ったが、詮方ない世間の話はしないままに帰って行った。世間でも稀な言葉少ない兄と妹。そうこうするうち、突然大弐の北の方がやってきた。
15.8 叔母が荒れた宮家にやってきて、操を立てて源氏を待っていても無駄だ、とあれこれ説得したが、姫君は叔母の言うとおりだとは思っても、太宰府へ一緒に行こうとはしなかった。侍従は行くことになっていた。
15.9 叔母は、姫を召使にしようと下心があったので、あれこれと言葉を尽くして説得したが、姫は動こうとしなかった。長年仕えてくれた侍従に、形見として九尺ほどの自分の髪を削いで作った鬘と、香ばしい薫衣香を壺を添えて贈って、泣きじゃくるのだった。
15.10 十一月になり、雪や霰が降って、生い茂る蓬や葎に積もって消えず、越の白山のようになった。姫君は侍従もおらす出入りの下人もおらす、塵積もる帳にひとり物悲しく沈むのだった。そして年が変わった。
15.11 四月になって、花散里のところへ向かう途中で、木立が森のように茂った荒れた邸の前を通りかかり、 木立に見覚えがあるのを思い出した。惟光をやって邸内の消息を尋ねさせた。
15.12 惟光は、人気のない邸内をめぐったが、月明かりが明るくなって、やっと御簾が動く気配を見て、面会を求めた。老婆が応対した。姫は昔に変わらぬ生活をしていたのだった。
15.13 惟光の報告をきいて、源氏は寄っていこうと思い、邸内に入った。 庭の木々から雨の露がひどく落ちてきて、指貫の裾を濡らした。
15.14 姫君は、大弐の北の方が置いていった衣に着替えて待った。源氏は、「ご無沙汰していましたが、ずっと案じておりました。庭に生い茂る木立にかかる藤の花を通りすぎることもできず、立ち寄りました。これからはお心にかなわないことがありましたら、わたしが約束を破ったことで責めを負いまず」と約束し、昔に変わらぬ生活をしている姫君の貞淑に安堵するのだった。
15.15 葵祭や御禊などの貢物の品々を適宜分け与え、下男をやって蓬を刈らせ、板垣で塀をなおすなどしたので、女房たちは大いに喜ぶのだった。並の女には見向きもされぬ君が、万事人並みのこともできぬ姫君をあえて大事に扱うのはいかなる因縁であろうか。
15.16 宮邸を見限って散っていた女房たちも、競って戻ってきて、邸は活気を取り戻すのだった。
15.17 二年ばかり古宮に住んで、後に東の院に移った。ご対面することはなかったが、用事でお越しになるときなど顔を出されて、軽い扱いはしなかった。

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公開日20//年//月//日