源氏物語  胡蝶 あらすじ 章立て 登場人物

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胡蝶 あらすじ

源氏36才
今をときめく源氏の六条院では、池に舟を浮かべて楽を奏するなど、楽しみを極めていた。
一方、玉鬘を引き取った邸では、男たちから文が多数来るようになった。中でも熱心だったのは、玉鬘が父の子と知らない内大臣の子息の柏木、北の方と不仲な状態にある髭黒の右大臣、今は独身だが召人をたくさんかかえている兵部卿の宮の三人だった。
そのうち、親代わりどころか、源氏自身の好き心が出て、美しい玉鬘に恋心をだくようになるのだった。

胡蝶 章立て

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24.1 三月二十日頃の春の町の船楽
  弥生の二十日あまりのころほひ、春の御前のありさま、常よりことに尽くして匂ふ花の色、鳥の声、ほかの里には、まだ古りぬにやと、めづらしう見え聞こゆ。山の木立、中島のわたり、色まさる苔のけしきなど、若き人びとのはつかに心もとなく思ふべかめるに、唐めいたる舟造らせたまひける、急ぎ装束そうぞ かせたまひて、下ろし始めさせたまふ日は、雅楽寮うたづかさの人召して、舟の楽せらる。親王たち上達部など、あまた参りたまへり。
24.2 船楽、夜もすがら催される
暮れかかるほどに、「皇じやう」といふ楽、いとおもしろく聞こゆるに、心にもあらず、釣殿にさし寄せられて下りぬ。ここのしつらひ、いとこと削ぎたるさまに、なまめかしきに、御方々の若き人どもの、われ劣らじと尽くしたる装束、容貌、花をこき交ぜたる錦に劣らず見えわたる。
24.3 蛍兵部卿宮、玉鬘を思う
夜も明けぬ。朝ぼらけの鳥のさへづりを、中宮はもの隔てて、ねたう聞こし召しけり。
24.4 中宮、春の季の御読経主催す
 今日は、中宮の御読経みどきょうの初めなりけり。やがてまかでたまはで、休み所とりつつ、日の御よそひに替へたまふ人びとも多かり。
24.5 紫の上と中宮和歌を贈答
御消息、殿の中将の君して聞こえたまへり。
24.6 玉鬘に恋人多く集まる
西の対の御方は、かの踏歌の折の御対面の後は、こなたにも聞こえ交はしたまふ。深き御心もちゐや、浅くもいかにもあらむ、 けしきいと労あり、なつかしき心ばへと見えて、人の心隔つべくもものしたまはぬ人ざまなれば、いづ方にも皆心寄せきこえたまへり。
24.7 玉鬘へ求婚者たちの恋文
更衣ころもがえの今めかしう改まれるころほひ、空のけしきなどさへ、あやしうそこはかとなくをかしきを、のどやかにおはしませば、よろづの御遊びにて過ぐしたまふに、対の御方に、人びとの御文しげくなりゆくを、「思ひしこと」とをかしう思いて、ともすれば渡りたまひつつ御覧じ、さるべきには御返りそそのかしきこえたまひなどするを、うちとけず苦しいことに思いたり。
24.8 源氏、玉鬘の女房に教訓す
右近を召し出でて、 「かやうに訪づれきこえむ人をば、人選りして、応へなどはせさせよ。好き好きしうあざれがましき今やうの人の、便ないことし出でなどする、男の咎にしもあらぬことなり。
24.9 右近の感想
 右近も、うち笑みつつ見たてまつりて、「親と聞こえむには、似げなう若くおはしますめり。さし並びたまへらむはしも、あはひめでたしかし」と、思ひゐたり。
24.10 源氏、求婚者たちを批評
 「かう何やかやと聞こゆるをも、 思すところやあらむと、ややましきを、 かの大臣に知られたてまつりたまはむことも、 まだ若々しう何となきほどに、 ここら年経たまへる御仲にさし出でたまはむことは、いかがと思ひめぐらしはべる。なほ世の人のあめる方に定まりてこそは、 人びとしう、さるべきついでもものしたまはめと思ふを。
24.11 源氏、玉鬘と和歌を贈答
 御前近き呉竹の、いと若やかに生ひたちて、うちなびくさまのなつかしきに、立ちとまりたまうて、 「ませのうちに根深く植ゑし竹の子の おのが世々にや生ひわかるべき 思へば恨めしかべいことぞかし」 と、御簾を引き上げて聞こえたまへば、ゐざり出でて、 「今さらにいかならむ世か若竹の 生ひ始めけむ根をば尋ねむ なかなかにこそはべらめ」 と聞こえたまふを、いとあはれと思しけり。さるは、心のうちにはさも思はずかし。
24.12 源氏、紫の上に玉鬘を語る
 殿は、いとどらうたしと思ひきこえたまふ。上にも語り申したまふ。 「あやしうなつかしき人のありさまにもあるかな。
24.13 源氏、玉鬘を訪問し恋情を訴える
 雨のうち降りたる名残の、いとものしめやかなる夕つ方、御前の若楓、柏木などの、青やかに茂りあひたるが、何となく心地よげなる空を見い出したまひて、 「和してまた清し」 とうち誦じたまうて、まづ、この姫君の御さまの、匂ひやかげさを思し出でられて、例の、忍びやかに渡りたまへり。
24.14 源氏、自制して帰る
 雨はやみて、風の竹に生るほど、はなやかにさし出でたる月影、をかしき夜のさまもしめやかなるに、人びとは、こまやかなる御物語にかしこまりおきて、気近くもさぶらはず。
24.15 苦悩する玉鬘
 またの朝、御文とくあり。悩ましがりて臥したまへれど、人びと御硯など参りて、「御返りとく」と聞こゆれば、しぶしぶに見たまふ。白き紙の、うはべはおいらかに、すくすくしきに、いとめでたう書いたまへり。

胡蝶 登場人物

光る源氏の太政大臣時代三十六歳の春三月から四月の物語
  • 光る源氏  ひかるげんじ  呼称---大臣の君・主人の大臣・大臣・殿、三十六歳
  • 夕霧  ゆうぎり  呼称---殿の中将の君・中将の君・殿の中将・中将・君、光る源氏の長男
  • 紫の上  むらさきのうえ  呼称---春の上・上、源氏の正妻
  • 玉鬘  たまかづら  呼称---西の対の姫君・西の対の御方・対の御方・姫君・女君・君・女、内大臣の娘
  • 内大臣  ないだいじん  呼称---内の大臣・父大臣・大臣
  • 蛍兵部卿宮  ほたるひょうぶきょうのみや  呼称---兵部卿宮・宮・親王・君
  • 柏木  かしわぎ  呼称---内の大殿の中将・岩漏る中将
  • 秋好中宮  あきこのむちゅうぐう  呼称---中宮・宮
  • 鬚黒大将  ひげくろだいしょう  呼称---右大将・大将

※ このページは、渋谷栄一氏の源氏物語の世界によっています。人物の紹介、見出し区分等すべて、氏のサイトからいただき、そのまま載せました。ただしあらすじは自前。氏の驚くべき労作に感謝します。

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源氏物語  胡蝶 あらすじ 章立て 登場人物

公開日2019年6月16日/ 改定2023年4月22日