源氏物語  竹河 あらすじ 章立て 登場人物

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竹河 あらすじ

薫君の中将時代十五歳から十九歳までの物語

この巻の冒頭に次のように記されている。

これは、源氏の御族にも離れたまへりし、 後の大殿わたりにありける悪御達わるごたちの、落ちとまり残れるが、問はず語りしおきたるは、紫のゆかりにも似ざめれど、かの女どもの言ひけるは、「源氏の御末々に、ひがことどもの混じりて聞こゆるは、我よりも年の数積もり、ほけたりける人のひがことにや」などあやしがりける。いづれかはまことならむ。
(これは、源氏一族から離れて、後の太政大臣の髭黒に仕えていたおしゃべりな女房のなかで、生き残った者たちが、問わず語りしたもので、紫の上の話に似ていないが、彼女たちが言うには、「源氏の一族については、間違ったことが混じっているのは、年寄りの女房がぼけて喋ったものです」などと言っている。どちらが本当なのか。)

これからは、前とは別の物語だと語っているのである。源氏も紫の上も亡くなったので、その後の物語だと言っているのである。
髭黒が亡くなって、玉鬘は一人で子供たちを育て、邸を仕切っていた。髭黒と玉鬘の間には、子息3人、姫君2人がいた。前の北の方との間には、藤中将と真木柱がいた。真木柱は右大臣家の頭領になった紅梅の北の方である。姫君2人は大君、中の君と言われ、二人とも美しかった。多くの若者たちが求婚していた。故髭黒は大君の入内を志していた。薫も大君を好ましく思い、夕霧の子息の蔵人少将も大君に恋いこがれていた。母の雲居の雁を通じて、玉鬘に文をさし上げて頼むのだった。一方冷泉院は若い頃の玉鬘を望んで入内が果たせなかった恨みが残り、玉鬘もそれを気にしていて、院は大君を望んでいた。
結局、大君は冷泉院に、中の君は玉鬘から尚侍の職を譲られて今上帝に入内するのだが、大君の方は、姫君、皇子と子をもうけたが、院には一の宮の母の弘徽殿の女御がおり、秋好む中宮がいて、先に入内した女御たちとの関係がうまくゆかず、玉鬘はなやむのであった。

竹河 章立て

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44.1 鬚黒没後の玉鬘と子女たち
 これは、源氏の御族にも離れたまへりし、 後の大殿わたりにありける悪御達わるごたちの、落ちとまり残れるが、問はず語りしおきたるは、紫のゆかりにも似ざめれど、かの女どもの言ひけるは、「源氏の御末々に、ひがことどもの混じりて聞こゆるは、我よりも年の数積もり、ほけたりける人のひがことにや」などあやしがりける。いづれかはまことならむ。
44.2 玉鬘の姫君たちへの縁談
 男君たちは、御元服などして、おのおのおとなびたまひにしかば、殿のおはせでのち、心もとなくあはれなることもあれど、おのづからなり出でたまひぬべかめり。「姫君たちをいかにもてなしたてまつらむ」と、思し乱る。
44.3 夕霧の息子蔵人少将の求婚
 容貌いとようおはする聞こえありて、心かけ申したまふ人多かり。
44.4 薫君、玉鬘邸に出入りす
 六条院の御末に、朱雀院の宮の御腹に生まれたまへりし君、冷泉院に、御子のやうに思しかしづく四位侍従、そのころ十四、五ばかりにて、いときびはに幼かるべきほどよりは、心おきておとなおとなしく、めやすく、人にまさりたる生ひ先しるくものしたまふを、尚侍の君は、婿にても見まほしく思したり。
44.5 正月、夕霧、玉鬘邸に年賀に参上
 睦月の朔日ころ、尚侍の君の御兄弟の大納言、「高砂」謡ひしよ、藤中納言、故大殿の太郎、真木柱の一つ腹など参りたまへり。
44.6 薫君、玉鬘邸に年賀に参上
夕つけて、四位侍従参りたまへり。
44.7 梅の花盛りに、薫君、玉鬘邸を訪問
 侍従の君、まめ人の名をうれたしと思ひければ、二十余日のころ、梅の花盛りなるに、「 匂ひ少なげに取りなされじ。好き者ならはむかし」と思して、 藤侍従の御もとにおはしたり。
44.8 得意の薫君と嘆きの蔵人少将
少将も、声いとおもしろうて、「さき草」謡ふ。
44.9 三月、花盛りの玉鬘邸の姫君たち
 弥生になりて、咲く桜あれば、散りかひくもり、おほかたの盛りなるころ、のどやかにおはする所は、紛るることなく、端近なる罪もあるまじかめり。
44.10 玉鬘の大君、冷泉院に参院の話
尚侍の君、かくおとなしき人の親になりたまふ御年のほど思ふよりは、いと若うきよげに、なほ盛りの御容貌と見えたまへり。
44.11 蔵人少将、姫君たちを垣間見る
 中将など立ちたまひてのち、君たちは、打ちさしたまへる碁打ちたまふ。
44.12 姫君たち、桜花を惜しむ和歌を詠む
 君達は、花の争ひをしつつ明かし暮らしたまふに、風荒らかに吹きたる夕つ方、乱れ落つるがいと口惜しうあたらしければ、負け方の姫君、 「桜ゆゑ風に心の騒ぐかな 思ひぐまなき花と見る見る」 御方の宰相の君、 「咲くと見てかつは散りぬる花なれば 負くるを深き恨みともせず」 と聞こえ助くれば、右の姫君、 「風に散ることは世の常枝ながら 移ろふ花をただにしも見じ」 この御方の大輔の君、 「心ありて池のみぎはに落つる花 あわとなりてもわが方に寄れ」 勝ち方の童女おりて、花の下にありきて、散りたるをいと多く拾ひて、持て参れり。
44.13 大君、冷泉院に参院決定
 かくいふに、月日はかなく過ぐすも、行く末のうしろめたきを、尚侍の殿はよろづに思す。
44.14 蔵人少将、藤侍従を訪問
 かひなきことも言はむとて、例の、侍従の曹司に来たれば、源侍従の文をぞ見ゐたまへりける。
44.15 四月一日、蔵人少将、玉鬘へ和歌を贈る
 またの日は、卯月になりにければ、兄弟の君たちの、内裏に参りさまよふに、いたう屈じ入りて眺めゐたまへれば、母北の方は、涙ぐみておはす。
44.16 四月九日、大君、冷泉院に参院
 九日にぞ、参りたまふ。右の大殿、御車、御前の人びとあまたたてまつりたまへり。
44.17 蔵人少将、大君と和歌を贈答
 蔵人の君、例の人にいみじき言葉を尽くして、 「今は限りと思ひはべる命の、さすがに悲しきを。あはれと思ふ、とばかりだに、一言のたまはせば、それにかけとどめられて、しばしもながらへやせむ」 などあるを、持て参りて見れば、姫君二所うち語らひて、いといたう屈じたまへり。夜昼もろともに慣らひたまひて、中の戸ばかり隔てたる西東をだに、いといぶせきものにしたまひて、かたみにわたり通ひおはするを、よそよそにならむことを思すなりけり。
44.18 冷泉院における大君と薫君
 大人、童、めやすき限りをととのへられたり。
44.19 失意の蔵人少将と大君のその後
 かの少将の君はしも、まめやかに、いかにせましと、過ちもしつべく、しづめがたくなむおぼえける。
44.20 正月、男踏歌、冷泉院に回る
 その年かへりて、男踏歌せられけり。殿上の若人どもの中に、物の上手多かるころほひなり。
44.21 翌日、冷泉院、薫を召す
 †夜一夜、所々かきありきて、いと悩ましう苦しくて臥したるに、源侍従を、院より召したれば、「あな、苦し。しばし休むべきに」とむつかりながら参りたまへり。御前のことどもなど問はせたまふ。
44.22 四月、大君に女宮誕生
 卯月に、女宮生まれたまひぬ。ことにけざやかなるものの、栄もなきやうなれど、院の御けしきに従ひて、右の大殿よりはじめて、御産養うぶやしないしたまふ所々多かり。尚侍かむの君、つと抱き持ちてうつくしみたまふに、疾う参りたまふべきよしのみあれば、五十日のほどに参りたまひぬ。
44.23 玉鬘、夕霧へ手紙を贈る
 「かくて、心やすくて内裏住みもしたまへかし」と、思すにも、「いとほしう、少将のことを、母北の方のわざとのたまひしものを。頼めきこえしやうにほのめかし聞こえしも、いかに思ひたまふらむ」と思し扱ふ。
44.24 玉鬘、出家を断念
 前の尚侍の君、容貌を変へてむと思し立つを、 「かたがたに扱ひきこえたまふほどに、行なひも心あわたたしうこそ思されめ。今すこし、いづ方も心のどかに見たてまつりなしたまひて、もどかしきところなく、ひたみちに勤めたまへ」 と、君たちの申したまへば、思しとどこほりて、内裏には、時々忍びて参りたまふ折もあり。院には、わづらはしき御心ばへのなほ絶えねば、さるべき折も、さらに参りたまはず。
dt>44.25 大君、男御子を出産
 卯月に、女宮生まれたまひぬ。
44.26 求婚者たちのその後
 聞こえし人びとの、めやすくなり上りつつ、さてもおはせましに、かたはならぬぞあまたあるや。
44.27 薫、玉鬘邸に昇進の挨拶に参上
 左大臣亡せたまひて、右は左に、藤大納言、左大将かけたまへる右大臣になりたまふ。
44.28 薫、玉鬘と対面しての感想
 「さらにかうまで思すまじきことになむ。
44.29 右大臣家の大饗
 大臣の殿は、ただこの殿の東なりけり。
44.30 宰相中将、玉鬘邸を訪問
 左の大殿の宰相中将、大饗のまたの日、夕つけてここに参りたまへり。

竹河 登場人物

 
名称よみかた役柄と他の呼称
かおる 呼称---侍従・源侍従の君・四位の侍従・薫中将・宰相中将・中納言・源中納言、源氏の子
匂宮におうのみや 呼称---兵部卿宮・宮、今上帝の第三親王
夕霧ゆうぎり 呼称---右大臣・右の大殿・左大臣・左の大殿、源氏の長男
紅梅大納言こうばいのだいなごん 呼称---大納言・藤大納言・大納言殿・大臣・大臣殿、致仕大臣の二男、故柏木の弟
蔵人少将くろうどのしょうしょう 呼称---蔵人少将・少将・三位中将・宰相中将、夕霧の子
左近中将さこんのちゅうじょう 呼称---中将・中将の君・右兵衛督、鬚黒の長男
右中弁うちゅうべん 呼称---弁の君・右大弁、鬚黒の二男
藤侍従とうじじゅう 呼称---侍従の君・主人の侍従・頭中将、鬚黒の三男
大君おおいきみ 呼称---姫君・姉君・御息所、鬚黒の長女
中君,なかのきみ 呼称---若君・右の姫君・中の姫君・尚侍・内裏の君、鬚黒の二女
真木柱まきばしら 呼称---北の方・真木柱の君、鬚黒大将の娘、蛍兵部卿宮の北の方
玉鬘たまかずら 呼称---尚侍・尚侍君・前の尚侍君・大上、鬚黒大将の北の方
冷泉院れいぜいいん 呼称---冷泉院の帝・院・帝・院の上・上、桐壺帝の皇子
今上帝きんじょうてい 呼称---内裏、朱雀院の皇子
東宮とうぐう 呼称---春宮、今上帝の第一親王

※ このページは、渋谷栄一氏の源氏物語の世界によっています。人物の紹介、見出し区分等すべて、氏のサイトからいただき、そのまま載せました。ただしあらすじは自前。氏の驚くべき労作に感謝します。

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源氏物語  紅梅 あらすじ 章立て 登場人物

公開日2020年8月3日/改定 2023年8月24日