源氏物語  手習・登場人物と見出し

薫君の大納言時代二十七歳三月末頃から二十八歳の夏までの物語
 
名称よみかた役柄と他の呼称
かおる 呼称---右大将殿・大将殿・大将・殿、源氏の子
匂宮におうのみや 呼称---兵部卿宮・宮、今上帝の第三親王
明石中宮あかしのちゅうぐう 呼称---大宮・后の宮・宮、源氏の娘
夕霧ゆうぎり 呼称---右大臣殿・右の大殿、源氏の長男
女一の宮おんないちのみや 呼称---姫宮・一品の宮・宮、今上帝の第一内親王
女二の宮おんなにのみや 呼称---姫宮・帝の御女、今上帝の第二内親王
中君なかのきみ 呼称---兵部卿宮の北の方・姉君、八の宮の二女
浮舟うきふね 呼称---姫君・故八宮の御女・大将殿の御後・御妹、八の宮の三女
中将の君ちゅうじょうのきみ 呼称---母君・親・母、浮舟の母
小君こぎみ 呼称---小君・童・弟の童、浮舟の異父弟
浮舟の乳母うきふねのめのと 呼称---乳母
母尼ははのあま 呼称---大尼君・母の尼君、横川僧都の母
横川僧都よかわのそうず 呼称---なにがし僧都・僧都
妹尼いもうとのあま 呼称---妹の尼君・尼上・娘の尼君、横川僧都の妹
中将ちゅうじょう 呼称---中将殿・婿の君・客人・男君、薫妹尼君の娘婿
弟子の阿闍梨でしのあざり 呼称---阿闍梨、横川僧都の弟子
小宰相の君こざいしょうのきみ 呼称---宰相の君

手習・見出し区分

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53.1 横川僧都の母、初瀬詣での帰途に急病
 そのころ、横川に、なにがし僧都とか言ひて、いと尊き人住みけり。
53.2 僧都、宇治の院の森で妖しい物に出会う
  まづ、僧都渡りたまふ。
53.3 若い女であることを確認し、救出する
 妖しのさまに、額おし上げて出で来たり。
53.4 妹尼、若い女を介抱す
 御車寄せて降りたまふほど、いたう苦しがりたまふとて、ののしる。
53.5 若い女生き返るが、死を望む
 僧都もさしのぞきて、
53.6 宇治の里人、僧都に葬送のことを語る
 二日ばかり籠もりゐて、二人の人を祈り加持する声絶えず、あやしきことを思ひ騒ぐ。
53.7 尼君ら一行、小野に帰る
  尼君よろしくなりたまひぬ。
53.8 僧都、小野山荘へ下山
 うちはへかく扱ふほどに、四、五月も過ぎぬ。
53.9 もののけ出現
 「朝廷の召しにだに従はず、深く籠もりたる山を出でたまひて、
53.10 浮舟、意識を回復
 正身の心地はさはやかに、いささかものおぼえて見回したれば、
53.11 浮舟、五戒を受く
 「いかなれば、かく頼もしげなくのみはおはするぞ。
53.12 浮舟、素性を隠す
 「夢のやうなる人を見たてまつるかな」と尼君は喜びて、
53.13 小野山荘の風情
  この主人もあてなる人なりけり。
53.14 浮舟、手習して述懐
 尼君ぞ、月など明き夜は、琴など弾きたまふ。
53.15 浮舟の日常生活
 若き人の、かかる山里に、今はと思ひ絶え籠もるは、難きわざなりければ、
53.16 尼君の亡き娘の婿君、山荘を訪問
 尼君の昔の婿の君、今は中将にてものしたまひける、
53.17 浮舟の思い
  人びとに水飯などやうの物食はせ、君にも蓮の実などやうのもの出だしたれば、/dd>
53.18 中将、浮舟を垣間見る
 尼君入りたまへる間に、客人、雨のけしきを見わづらひて、
53.19 中将、横川の僧都と語る
 前近き女郎花を折りて、「何匂ふらむ」と口ずさびて、独りごち立てり。
53.20 中将、帰途に浮舟に和歌を贈る
 またの日、帰りたまふにも、「過ぎがたくなむ」とておはしたり。
53.21 中将、三度山荘を訪問
 文などわざとやらむは、さすがにうひうひしう、ほのかに見しさまは忘れず、
53.22 尼君、中将を引き留める
 さすがに、かかる古代の心どもにはありつかず、今めきつつ、
53.23 母尼君、琴を弾く
 「女は、昔は、東琴をこそは、こともなく弾きはべりしかど、今の世には、変はりにたるにやあらむ。
53.24 翌朝、中将から和歌が贈られる
 これに事皆醒めて、帰りたまふほども、山おろし吹きて、聞こえ来る笛の音、
53.25 九月、尼君、再度初瀬に詣でる
 九月になりて、この尼君、初瀬に詣づ。
53.26 浮舟、少将の尼と碁を打つ
 皆出で立ちけるを眺め出でて、あさましきことを思ひながらも、
53.27 中将来訪、浮舟別室に逃げ込む
  月さし出でてをかしきほどに、昼文ありつる中将おはしたり。/dd>
53.28 老尼君たちのいびき
 姫君は、「いとむつかし」とのみ聞く老い人のあたりにうつぶし臥して、寝も寝られず。
53.29 浮舟、悲運のわが身を思う
 昔よりのことを、まどろまれぬままに、常よりも思ひ続くるに、
53.30 僧都、宮中へ行く途中に立ち寄る
 下衆下衆しき法師ばらなどあまた来て、
53.31 浮舟、僧都に出家を懇願
 立ちてこなたにいまして、「ここにや、おはします」とて、几帳のもとについゐたまへば、
53.32 浮舟、出家す
 「あやしく、かかる容貌ありさまを、などて身をいとはしく思ひはじめたまひけむ。
53.33 少将の尼、浮舟の出家に気も動転
 かかるほど、少将の尼は、兄の阿闍梨の来たるに会ひて、下にゐたり。
53.34 浮舟、手習に心を託す
 皆人びと出で静まりぬ。
53.35 中将からの和歌に返歌す
 同じ筋のことを、とかく書きすさびゐたまへるに、中将の御文あり。
53.36 僧都、女一宮に伺候
 一品の宮の御悩み、げに、かの弟子の言ひしもしるく、
53.37 僧都、女一宮に宇治の出来事を語る
   御もののけの執念きことを、さまざまに名のるが恐ろしきことなどのたまふついでに、
53.38 僧都、山荘に立ち寄り山へ帰る
 姫宮おこたり果てさせたまひて、僧都も登りぬ。
53.39 中将、小野山荘に来訪
 今日は、ひねもすに吹く風の音もいと心細きに、おはしたる人も、
53.40 浮舟に和歌を贈って帰る
 「かばかりのさましたる人を失ひて、尋ねぬ人ありけむや。
53.41 新年、浮舟と尼君、和歌を詠み交す
 年も返りぬ。
53.42 大尼君の孫、紀伊守、山荘に来訪
 大尼君の孫の紀伊守なりける、このころ上りて来たり。
53.43 浮舟、薫の噂など漏れ聞く
 かのわたりの親しき人なりけり」と見るにも、さすが恐ろし。
53.44 浮舟、尼君と語り交す
 「忘れたまはぬにこそは」とあはれに思ふにも、いとど母君の御心のうち推し量らるれど、
53.45 薫、明石中宮のもとに参上
 大将は、この果てのわざなどせさせたまひて、「はかなくて、止みぬるかな」とあはれに思す。
53.46 小宰相、薫に僧都の話を語る
 立ち寄りて物語などしたまふついでに、言ひ出でたり。
53.47 薫、明石中宮に対面し、横川に赴く
  「あさましうて、失ひはべりぬと思ひたまへし人、世に落ちあぶれてあるやうに、人のまねびはべりしかな。

※ このページは、渋谷栄一氏の源氏物語の世界によっています。人物の紹介、見出し区分等すべて、氏のサイトからいただき、そのまま載せました。ただし章分けは省略しました。氏の驚くべき労作に感謝します。

公開日2021年3月21日