源氏物語  関屋・注釈

HOME表紙へ 源氏物語・目次 関屋

16 関屋

筑波嶺の山を吹き越す風も、浮きたる心地して 筑波峯の山を吹き越す風に託すのは、頼りない気がして。「甲斐が峯を峯越し山越し吹く風を人にもがもや言つてやらむ」(古今巻二十、東歌)常陸からではあまりに遠いので、途中を不安に思って控えたことをいう。
類広く見ゆ 一族縁者が多いと見える。
関屋 関所の建物。
さとくづれ出でたる旅姿どもの さっと現れ出た旅姿のものたち(源氏一行)。
色々の襖のつきづきしき縫物、括り染めのさまも、さるかたにをかしう見ゆ 「襖」狩衣に裏のついたもの。位階により染色が異なる。狩襖(かりあお)。「つきづきしき縫物」よく似合った刺繍の模様。「くくり染めのさまも」絞り染め。旅行着は派手なものが好まれた。「さるかたに」こうした旅行着としては。
右衛門佐えもんのすけ 衛門府の次官。従五位上相当。
今日の御関迎へは、え思ひ捨てたまはじ 今日の関までのお出迎えは、おろそかにはお思いになりますまい。偶然の再会をわざとこう言った。
おほぞうにてかひなし 一通りのご伝言だけなので、何のかいもない。
行くと来とせき止めがたき涙をや絶えぬ清水と人は見るらむ 逢坂の関を越えて行くものと来るものと、行き違って逢うことができず、それを悲しんで流すわたし涙を、絶えず流れる関の清水と人は見ることであろうか。(新潮日本古典集成 新潮社)/ 行くときも帰るときも、抑えきれないわたしの涙を、人は絶えず流れる関の清水と思うでしょう。(玉上
かうぶりなど得しまで 従五位下に叙せられること。叙爵といい、立身の最初の関門であった。
わくらばに行き逢ふ道を頼みしもなほかひなしや潮ならぬ海 逢坂の関での偶然の再会に期待を寄せていましたが、やはり無駄でした、何しろ潮ならぬ海ですから。(新潮日本古典集成 新潮社)/ たまたま行き会いそれも近江路で頼もしく思いましたのに、お目にかかれないとは、やはりかいがありませんね、塩でない海ですから。(玉上)
逢坂の関やいかなる関なればしげき嘆きの仲を分くらむ 逢坂の関は一体どんな関だというので、こう深い嘆きを味わわねばならぬのでしょう。(新潮日本古典集成)/ 逢坂の関はどんな関なので、生い茂った木々の間をかき分けて行くのでしょうか。わたしたちはどうしてこうも深い嘆きを重ねるのでしょう。(玉上)
あはれもつらさも、忘れぬふしと思し置かれたる人なれば 恋しさも恨めしさも、忘れがたい一件だったと、心にとどめていらっしゃる人だったので。
のたまひ動かしけり 「言ひ動かす」の尊敬語。恋文をやって心をひこうとすること。
あいなのさかしらやなどぞ /つまらぬおせっかいだ、などと人は申しているようです。世間の評判を伝える語り手の言葉。/ つからぬおせっかいだ、などと申すそうで。

HOME表紙へ 源氏物語・目次 関屋
公開日2018年9月4日