源氏物語  玉鬘 あらすじ 章立て 登場人物

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玉鬘  あらすじ

玉鬘の筑紫時代と光る源氏の太政大臣時代三十五歳の夏四月から冬十月までの物語

夕顔の遺児玉鬘は、乳母の夫が太宰の少弐になって任地に赴任するため、母夕顔の安否がわからぬまま、乳母と一緒に任地へ行った。任期の5年が終わるころ太宰の大弐が亡くなり、姫君の美しさは評判になり、なかでも、大夫の監といってこの地域に権勢のある者が、求愛してきた。弟たちを味方につけた大夫の監たゆうのげんは、結婚の日取りを決めて迫ったが、長男の豊後の介ぶんごのすけは父の遺言を守り、一家で京へ上る決断をした。妹も夫子どもを置いて上京した。豊後の介一行は、逃げるように早舟で上京した。
知り合いの所に落ち着いて、寄る辺なく、石清水八幡に詣で、初瀬の寺に詣でて願掛けをする。そこへたまたま初瀬詣でに来ていた夕顔のかっての侍女の右近に出会う。右近は今、源氏に引き取られ、紫の上に仕えていた。
右近から話を聞いた源氏は、六条の院に玉鬘を迎える。長男の豊後の介は家司となった。源氏は、夕霧同様、花散里に玉鬘のお世話をお頼みになる。

玉鬘  章立て

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22.1 源氏と右近、夕顔を回想
 年月隔たりぬれど、飽かざりし夕顔を、つゆ忘れたまはず、心々こころごころなる人のありさまどもを、見たまひ重ぬるにつけても、「あらましかば」と、あはれに口惜しくのみ思し出づ。
22.2 玉鬘一行、筑紫へ下向
母君の御行方を知らむと、よろづの神仏に申して、夜昼泣き恋ひて、さるべき所々を尋ねきこえけれど、つひにえ聞き出でず。
22.3 乳母の夫の遺言
 少弐、任果てて上りなどするに、遥けきほどに、ことなる勢ひなき人は、たゆたひつつ、すがすがしくも出で立たぬほどに、重き病して、死なむとする心地にも、この君の十ばかりにもなりたまへるさまの、ゆゆしきまでをかしげなるを見たてまつりて、 「我さへうち捨てたてまつりて、いかなるさまにはふれたまはむとすらむ。あやしき所に生ひ出でたまふも、かたじけなく思ひきこゆれど、いつしかも京に率てたてまつりて、さるべき人にも知らせたてまつりて、御宿世にまかせて見たてまつらむにも、都は広き所なれば、いと心やすかるべしと、思ひいそぎつるを、ここながら命堪へずなりぬること」 と、うしろめたがる。
22.4 玉鬘への求婚
 聞きついつつ、好いたる田舎人ども、心かけ消息がる、いと多かり。ゆゆしくめざましくおぼゆれば、誰も誰も聞き入れず。
22.5 大夫の監の求婚
大夫監とて、肥後国に族広くて、かしこにつけてはおぼえあり、勢ひいかめしき兵ありけり。
22.6 大夫の監の訪問
三十ばかりなる男の、丈高くものものしく太りて、きたなげなけれど、思ひなし疎ましく、荒らかなる振る舞ひなど、見るもゆゆしくおぼゆ。
22.7 大夫の監、和歌を詠み贈る
 下りて行く際に、歌詠ままほしかりければ、やや久しう思ひめぐらして、 「君にもし心違はば松浦なる 鏡の神をかけて誓はむ この和歌は、仕うまつりたりとなむ思ひたまふる」 と、うち笑みたるも、世づかずうひうひしや。あれにもあらねば、返しすべくも思はねど、娘どもに詠ますれど、 「まろは、ましてものもおぼえず」 とてゐたれば、いと久しきに思ひわびて、うち思ひけるままに、 「年を経て祈る心の違ひなば 鏡の神をつらしとや見む」 とわななかし出でたるを、 「待てや。こはいかに仰せらるる」 と、ゆくりかに寄り来たるけはひに、おびえて、おとど、色もなくなりぬ。
22.8 玉鬘、筑紫を脱出
 次郎が語らひ取られたるも、いと恐ろしく心憂くて、この豊後介ぶんごのすけを責むれば、 「いかがは仕まつるべからむ。語らひあはすべき人もなし。
22.9 都に帰着
 「かく、逃げぬるよし、おのづから言ひ出で伝へば、負けじ魂にて、追ひ来なむ」と思ふに、心も惑ひて、早舟といひて、さまことになむ構へたりければ、思ふ方の風さへ進みて、危ふきまで走り上りぬ。響の灘もなだらかに過ぎぬ。
22.10 岩清水八幡宮へ参詣
 九条に、昔知れりける人の残りたりけるを訪らひ出でて、その宿りを占め置きて、都のうちといへど、はかばかしき人の住みたるわたりにもあらず、あやしき市女、商人のなかにて、いぶせく世の中を思ひつつ、秋にもなりゆくままに、来し方行く先、悲しきこと多かり。
22.11 初瀬の観音へ参詣
 「うち次ぎては、仏の御なかには、初瀬なむ、日の本のうちには、あらたなる験現したまふと、唐土にだに聞こえあむなり。まして、わが国のうちにこそ、遠き国の境とても、年経たまへれば、若君をば、まして恵みたまひてむ」 とて、出だし立てたてまつる。
22.12 右近も初瀬へ参詣
これも徒歩よりなめり。よろしき女二人、下人どもぞ、男女、数多かむめる。
22.13 右近、玉鬘に再会す
からうして、  「おぼえずこそはべれ。筑紫の国に、二十年ばかり経にける下衆の身を、知らせたまふべき京人よ。人違へにやはべらむ」  とて、寄り来たり。
22.14 右近、初瀬観音に感謝
日暮れぬと、急ぎたちて、御燈明の事どもしたため果てて、急がせば、なかなかいと心あわたたしくて立ち別る。
22.15 三条、初瀬観音に祈願
国々より、田舎人多く詣でたりけり。
22.16 右近、主人の光る源氏について語る
明けぬれば、知れる大徳の坊に下りぬ。
22.17 乳母、右近に依頼
 「かかる御さまを、ほとほとあやしき所に沈めたてまつりぬべかりしに、あたらしく悲しうて、家かまどをも捨て、男女の頼むべき子どもにも引き別れてなむ、かへりて知らぬ世の心地する京にまうで来し。
22.18 右近、玉鬘一行と約束して別れる
参り集ふ人のありさまども、見下さるる方なり。
22.19 右近、六条院に帰参する
 右近は、大殿に参りぬ。
22.20 右近、源氏に玉鬘との邂逅を語る
大殿籠もるとて、右近を御脚参りに召す。
22.21 源氏、玉鬘を六条院へ迎える
  かく聞きそめてのちは、召し放ちつつ、 「さらば、かの人、このわたりに渡いたてまつらむ。年ごろ、もののついでごとに、口惜しう惑はしつることを思ひ出でつるに、いとうれしく聞き出でながら、今までおぼつかなきも、かひなきことになむ。
22.22 玉鬘、源氏に和歌を返す
 正身そうじみは、 「ただかことばかりにても、まことの親の御けはひならばこそうれしからめ、いかでか知らぬ人の御あたりには交じらはむ」 と、おもむけて、苦しげに思したれど、あるべきさまを、右近聞こえ知らせ、人びとも、 「おのづから、さて人だちたまひなば、大臣の君も尋ね知りきこえたまひなむ。親子の御契りは、絶えて止まぬものなり」 「右近が、数にもはべらず、いかでか御覧じつけられむと思ひたまへしだに、仏神の御導きはべらざりけりや。まして、誰れも誰れもたひらかにだにおはしまさば」 と、皆聞こえ慰む。
22.23 源氏、紫の上に夕顔について語る
上にも、今ぞ、かのありし昔の世の物語聞こえ出でたまひける。
22.24 玉鬘、六条院に入る
かくいふは、九月のことなりけり。
22.25 源氏、玉鬘に対面する
その夜、やがて大臣の君渡りたまへり。
22.26 源氏、玉鬘の人物に満足する
めやすくものしたまふを、うれしく思して、上にも語りきこえたまふ。
22.27 玉鬘の六条院生活始まる
 中将の君にも、 「かかる人を尋ね出でたるを、用意して睦び訪らへ」 とのたまひければ、こなたに参うでたまひて、 「人数ならずとも、かかる者さぶらふと、まづ召し寄すべくなむはべりける。御渡りのほどにも、参り仕うまつらざりけること」 と、いとまめまめしう聞こえたまへば、かたはらいたきまで、心知れる人は思ふ。
22.28 歳末の衣配り
 年の暮に、御しつらひのこと、人びとの装束など、やむごとなき御列に思しおきてたる、「かかりとも、田舎びたることや」と、山賤の方にあなづり推し量りきこえたまひて調じたるも、たてまつりたまふついでに、織物どもの、我も我もと、手を尽くして織りつつ持て参れる細長ほそなが、小袿こうちきの、色々さまざまなるを御覧ずるに、 「いと多かりけるものどもかな。方々に、うらやみなくこそものすべかりけれ」 と、上に聞こえたまへば、御匣殿みくしげどのに仕うまつれるも、こなたにせさせたまへるも、皆取う出させたまへり。
22.29 末摘花の返歌
皆、御返りどもただならず。
22.30 源氏の和歌論
「古代の歌詠みは、『唐衣』、『袂濡るる』かことこそ離れねな。

玉鬘 登場人物

  • 光る源氏  ひかるげんじ  三十五歳 (呼称)光る源氏・大臣・大臣の君・殿
  • 夕霧  ゆうぎり  光る源氏の長男 (呼称)中将・中将の君
  • 紫の上  むらさきのうえ  源氏の正妻 (呼称)対の上・殿の上・上・女君・君
  • 玉鬘  たまかづら  内大臣の娘(呼称)若君・姫君・御方・君・西の対・藤原の瑠璃君
  • 内大臣  ないだいじん  (呼称)内の大臣・父大臣・大臣・父君・中将殿
  • 花散里  はなちるさと  (呼称)東の御方・夏の御方・御方
  • 明石の御方  あかしのおほんかた  (呼称)明石の御方・北のおとど・明石
  • 末摘花  すえつむはな  (呼称)末摘
  • 乳母めのと玉鬘の乳母(呼称)御乳母・祖母おとど・おとど・母おとど・老い人- 乳母についてはこのサイトを参照のこと。
  • 豊後介ぶんごのすけ玉鬘の乳母子(呼称)介・兵藤太
  • 大夫監たゆうのげん玉鬘への求婚者(呼称)大夫監・監
  • 右近うこん紫の上付きの女房(呼称)右近// 夕顔の侍女。某の院に行を共にして夕顔の死に遭い、そのまま源氏に仕えることになった
  • 三条さんじょう玉鬘付きの女房(呼称)三条、

※ このページは、渋谷栄一氏の源氏物語の世界によっています。人物の紹介、見出し区分等すべて、氏のサイトからいただき、そのまま載せました。ただしあらすじは自前。氏の驚くべき労作に感謝します。

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源氏物語  玉鬘 あらすじ 章立て 登場人物

公開日2019年4月21日/ 改定2023年4月16日