蛍 あらすじ
源氏 36才 源氏の太政大臣時代三十六歳の五月雨期の物語
玉鬘は養父としてではなく、男として玉鬘に言い寄ろうとする源氏の態度に悩んでいた。玉鬘への熱心な求婚者の中でも、源氏は、それとなく異母弟にあたる兵部卿の宮を推薦して邸に招くのだった。宮の求愛のやり方を拝見しようとして、御簾の奥の玉鬘を蛍の明かりでの許で見させようとして、事前に蛍を集めて放つなど演出をする。
一方、女房たちにも気づかれぬように、源氏は玉鬘に何とかして近づこうとする。
内大臣は玉鬘の素性をまだ知らない。
螢 章立て
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- 25.1 玉鬘、養父の恋に悩む
- 今はかく重々しきほどに、よろづのどやかに思ししづめたる御ありさまなれば、頼みきこえさせたまへる人びと、さまざまにつけて、皆思ふさまに定まり、ただよはしからで、あらまほしくて過ぐしたまふ。
- 25.2 兵部卿宮、六条院に来訪
- 兵部卿宮などは、まめやかにせめきこえたまふ。
- 25.3 玉鬘、夕闇時に母屋の端に出る
- 夕闇過ぎて、おぼつかなき空のけしきの曇くもらはしきに、 うちしめりたる宮の御けはひも、いと艶なり。うちよりほのめく追風も、いとどしき御匂ひのたち添ひたれば、いと深く薫り満ちて、かねて思ししよりもをかしき御けはひを、心とどめたまひけり。
- 25.4 源氏、宮に蛍を放って玉鬘の姿を見せる
- 何くれと言長き御応へ聞こえたまふこともなく、思しやすらふに、 寄りたまひて、 御几帳の帷子を一重うちかけたまふにあはせて、さと光るもの。紙燭をさし出でたるかとあきれたり。
- 25.5 兵部卿宮、玉鬘にますます執心す
- 宮は、人のおはするほど、さばかりと推し量りたまふが、すこし気近きけはひするに、御心ときめきせられたまひて、えならぬ羅うすものの帷子の隙より見入れたまへるに、一間ばかり隔てたる見わたしに、かくおぼえなき光のうちほのめくを、をかしと見たまふ。
- 25.6 源氏、玉鬘への恋慕の情を自制す
- 姫君は、かくさすがなる御けしきを、
「わがみづからの憂さぞかし。親などに知られたてまつり、世の人めきたるさまにて、かやうなる御心ばへならましかば、などかはいと似げなくもあらまし。人に似ぬありさまこそ、つひに世語りにやならむ」
と、起き臥し思しなやむ。
- 25.7 五月五日端午の節句、源氏、玉鬘を訪問
- 五日には、馬場の御殿に出でたまひけるついでに、渡りたまへり。
- 25.8 六条院馬場殿の騎射
- 殿は、東の御方にもさしのぞきたまひて、
「中将の、今日の司の手結てつがいひのついでに、男ども引き連れてものすべきさまに言ひしを、さる心したまへ。
- 25.9 源氏、花散里のもとに泊まる
- 大臣は、こなたに大殿籠もりぬ 。
- 25.10 玉鬘ら六条院の女性たち、物語に熱中
- 長雨例の年よりもいたくして、晴るる方なくつれづれなれば、御方々、絵物語などのすさびにて、明かし暮らしたまふ。明石の御方は、さやうのことをもよしありてしなしたまひて、姫君の御方にたてまつりたまふ。
- 25.11 源氏、玉鬘に物語について論じる
- 「その人の上とて、ありのままに言ひ出づることこそなけれ、善きも悪しきも、世に経る人のありさまの、 見るにも飽かず、聞くにもあまることを、後の世にも言ひ伝へさせまほしき節々を、心に籠めがたくて、言ひおき始めたるなり。善きさまに言ふとては、善きことの限り選り出でて、 人に従はむとては、また悪しきさまの珍しきことを取り集めたる、 皆かたがたにつけたる、この世の他のことならずかし。
- 25.12 源氏、紫の上に物語について述べる
- 紫の上も、姫君の御あつらへにことつけて、物語は捨てがたく思したり。『くまのの物語』の絵にてあるを、
「いとよく描きたる絵かな」
とて御覧ず。小さき女君の、何心もなくて昼寝したまへるところを、昔のありさま思し出でて、女君は見たまふ。
- 25.13 源氏、子息夕霧を思う
- 中将の君を、こなたには気遠くもてなしきこえたまへれど、姫君の御方には、さしもさし放ちきこえたまはずならはしたまふ。
- 25.14 内大臣、娘たちを思う
- 内の大臣は、御子ども腹々いと多かるに、その生ひ出でたるおぼえ、人柄に従ひつつ、心にまかせたるやうなるおぼえ、御勢にて、皆なし立てたまふ。女むすめはあまたもおはせぬを、 女御も、かく思ししことのとどこほりたまひ、 姫君も、かくこと違ふさまにてものしたまへば、いと口惜しと思す。
蛍 登場人物
- 光る源氏 ひかるげんじ 呼称---大臣の君・殿、三十六歳
- 夕霧 ゆうぎり 呼称---中将・中将の君・君、光る源氏の長男
- 紫の上 むらさきのうえ呼称---紫の上・上・女君 源氏の正妻
- 玉鬘 たまかづら 呼称---対の姫君・姫君・西の対・対の御方・撫子・君・女、内大臣の娘
- 内大臣 ないだいじん 呼称---内の大臣
- 蛍兵部卿宮 ほたるひょうぶきょうのみや 呼称---兵部卿宮・宮・親王・君
- 柏木 かしわぎ
呼称---右中将
- 明石御方 あかしのおほんかた 呼称---明石御方
- 鬚黒大将 ひげくろだいしょう 呼称---右大将
- 秋好中宮
| あきこのむちゅうぐう | 呼称---中宮
- 花散里宮 はなちるさと 呼称---夏の御方
※ このページは、渋谷栄一氏の源氏物語の世界によっています。人物の紹介、見出し区分等すべて、氏のサイトからいただき、そのまま載せました。ただしあらすじは自前。氏の驚くべき労作に感謝します。
公開日2019年7月6日/ 改定2023年4月25日
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