藤裏葉 あらすじ
源氏 39才 太政大臣→太上天皇
大宮のもとで育った、夕霧と雲居の雁は恋仲になったが、父内大臣は別に雲居の雁を入内させようと思っていたので、大宮の教育を叱って、雲居の雁を自邸の引き取ってしまい、二人は離れ離れになる。夕霧は文は折々に出していたが、長いあいだ辛抱して、自分から内大臣に懇願しなかったので、内大臣は、自分の処置を反省し、大宮の命日の法要にでて、夕霧に侘びを入れるのだった。後日、御前の藤が美しく咲いているからと、夕霧を自邸に招待した。それが二人の間を認めるしるしだった。その日、夕霧は、酔ったので宿を貸してほしいと頼み、雲居の雁と契るのだった。雲井の雁は女らしく美しくなっていた。
明石の姫君が入内し、明石の君が後見として、宮中にでる。
源氏は四十になり、世はこぞって四十の賀祝う雰囲気になる。源氏は太上天皇の位を賜る。内大臣は太政大臣に、夕霧は中納言になった。
夕霧と雲居の雁は、住まいを大宮が住んでいた三条殿とした。昔から仕えていた女房達も残っていて、喜ぶのだった。
冷泉帝は朱雀帝を誘って、源氏の六条院へお越しになった。源氏の繁栄は今を盛りだった。
梅枝 章立て
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- 33.1 夕霧と雲居雁の相思相愛の恋
- 御いそぎのほどにも、宰相中将は眺めがちにて、ほれぼれしき心地するを、「かつはあやしく、わが心ながら執念きぞかし。
- 33.2 三月二十日、極楽寺に詣でる
- 君達皆ひき連れ、勢ひあらまほしく、上達部などもあまた参り集ひたまへるに、宰相中将、をさをさけはひ劣らず、よそほしくて、容貌など、ただ今のいみじき盛りにねびゆきて、取り集めめでたき人の御ありさまなり。
- 33.3 内大臣、夕霧を自邸に招待
- ここらの年ごろの思ひのしるしにや、かの大臣も、名残なく思し弱りて、はかなきついでの、わざとはなく、さすがにつきづきしからむを思すに、四月の朔日ごろ、御前の藤の花、いとおもしろう咲き乱れて、世の常の色ならず、ただに見過ぐさむこと惜しき盛りなるに、遊びなどしたまひて、暮れ行くほどの、いとど色まされるに、頭中将して、御消息あり。
- 33.4 夕霧、内大臣邸を訪問
- わが御方にて、心づかひいみじう化粧じて、たそかれも過ぎ、心やましきほどに参うでたまへり。
- 33.5 藤花の宴 結婚を許される
- 月はさし出でぬれど、花の色さだかにも見えぬほどなるを、もてあそぶに心を寄せて、大酒参り、御遊びなどしたまふ。
- 33.6 夕霧、雲居雁の部屋を訪う
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七日の夕月夜、影ほのかなるに、池の鏡のどかに澄みわたれり。
- 33.7 後朝の文を贈る
- 御文は、なほ忍びたりつるさまの心づかひにてあるを、なかなか今日はえ聞こえたまはぬを、もの言ひさがなき御達つきじろふに、大臣渡りて見たまふぞ、いとわりなきや。
- 33.8 夕霧と雲井雁の固い夫婦仲
- かくて、六条院の御いそぎは、二十余日のほどなりけり。
- 33.9 紫の上、賀茂の御阿礼に参詣
- かくて、六条院の御いそぎは、二十余日のほどなりけり。
- 33.10 柏木や夕霧たちの雄姿
- 近衛司の使は、頭中将なりけり。
- 33.11 四月二十日過ぎ、明石姫君、東宮に入内
- かくて、御参りは北の方添ひたまふべきを、「常に長々しうえ添ひさぶらひたまはじ。かかるついでに、かの御後見をや添へまし」と思す。
- 33.12 紫の上、明石御方と対面する
- 「かくおとなびたまふけぢめになむ、年月のほども知られはべれば、疎々しき隔ては、残るまじくや」
と、なつかしうのたまひて、物語などしたまふ。これもうちとけぬる初めなめり。ものなどうち言ひたるけはひなど、「むべこそは」と、めざましう見たまふ。
- 33.13 秋に准太上天皇の待遇を得る
- 大臣も、「長からずのみ思さるる御世のこなたに」と、思しつる御参りの、かひあるさまに見たてまつりなしたまひて、心からなれど、世に浮きたるやうにて、見苦しかりつる宰相の君も、思ひなくめやすきさまにしづまりたまひぬれば、御心おちゐ果てたまひて、「今は本意も遂げなむ」と、思しなる。
- 33.14 夕霧夫妻、三条殿に移る
- 御勢ひまさりて、かかる御住まひも所狭ければ、三条殿に渡りたまひぬ。
- 33.15 内大臣、三条殿を訪問
- 昔おはさひし御ありさまにも、をさをさ変はることなく、あたりあたりおとなしく住まひたまへるさま、はなやかなるを見たまふにつけても、いとものあはれに思さる。
- 33.16 十月二十日過ぎ、六条院行幸
- 神無月の二十日あまりのほどに、六条院に行幸あり。
- 33.17 六条院行幸の饗宴
- 皆御酔ひになりて、暮れかかるほどに、楽所がくその人召す。
- 33.18 朱雀院と冷泉帝の和歌
- 夕風の吹き敷く紅葉の色々、濃き薄き、錦を敷きたる渡殿の上、見えまがふ庭の面に、容貌をかしき童べの、やむごとなき家の子どもなどにて、青き赤き白橡しらつるばみ、蘇芳すほう、葡萄染えびぞめめなど、常のごと、例のみづらに、額ばかりのけしきを見せて、短きものどもをほのかに舞ひつつ、紅葉の蔭に返り入るほど、日の暮るるもいと惜しげなり。