源氏物語  賢木・注釈

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10 賢木

さりとも これまではそうだったとしても、今度こそ御息所が正妻に、の意。
宮のうちにも 野宮で奉仕する人々を指す。
いと見放ちがたき御ありさまなるにことつけて 斎宮幼少のゆえの同伴という理由で、源氏への執着を断とうとする。このとき、斎宮十四歳。史実の規子内親王より十五歳年下。
人は心づきなし 「人」は源氏のこと。源氏はわたしを魅力(冷淡な)のない女とみるだろうが。「心づきなし」気に入らない。心がひかれない。
思ひ果てたまひなむ 「おもいはつ」思いきる。あきらめる。
いでや はっきり定めかねる気持ち。さてどうかな。
埋もれいたきを 「埋もれいたし」控えめすぎる、意。内気すぎる。
そのこととも どの「こと」かわからないが。「こと」は絃楽器の総称。
立ちならさざりつらむ 「たち」は出かけること。そこを通ること。「ならす」はたびたびそうして習慣になること。
ことにひきつくろひたまへる御用意 外見をやつしているのとは逆に、心はこまやかに行き届いている。「こと」[殊に、異に]普通と違って。別して。
小柴垣を大垣にて 小柴で作った低い垣を外回りの垣とする。
板屋 板で屋根を葺いた建物。野宮は帝一代ごとの、ほとんど仮普請。
黒木の鳥居 皮のついたままの丸太の鳥居。
火焼屋ひたきや 衛士が警護のために篝火をたく小屋。
いとものし 「ものし」[物し]物々しく厭わしい。気障りだ。不愉快だ。
今はつきなきほどになりにてはべるを 「つきなし」 (付無し)不似合いである。不相応である。
いぶせうはべる 「いぶせし」気分が晴れず、うっとうしい。
いとかたはらいたう 「かたはらいたし」第三者の自分たち(女房たち)がつらく感じられるような源氏様子。側で見ていて気の毒である。
月ごろのつもりを 「ごろ」は複数。「つもり」は積り、重なり。幾月もご無沙汰している。
つきづきしう聞こえたまはむも、まばゆきほどになりにければ もっともらしい弁解もきまりわるいくらい疎遠になっている。
神垣はしるしの杉もなきものをいかにまがへて折れる榊ぞ< ここの神垣には人を導く目印の杉もないのに、どうおまちがいになってこの榊を折ったりして訪ねていらっしゃったのでしょうか。(小学館古典セレクション)/ ここの神垣にはおいでを待つ目印の杉もありませんのに、どう思いちがいなさって榊を折られたのでしょう。(玉上)/ この野宮の神垣には、三輪山のように道しるべの杉もないのに、どう間違って、榊を折ったのですぞ。(岩波大系)
少女子があたりと思へば榊葉の香をなつかしみとめてこそ折れ 神様にお仕えする少女(おとめ)のいるあたりと思いますので、榊葉の香に心ひかれ、捜し求めて折ってまいったのです。(小学館古典セレクション)/ おとめ子のいらっしゃるあたりだと思って榊の香がなつかしくわざわざ探して折ったのです。(玉上)
御簾ばかりはひき着て、長押におしかかりてゐたまへり。 御簾だけを引きかぶるようにして、君は下長押に寄りかかってすわっていらっしゃる。(小学館古セレクション)/ 君は御簾だけを引きかむって、敷居によりかかって座っていらっしゃる。(玉上)
さしも見えじと思しつつむめれど (女が)相手に心弱いところを見せまい。
御心おごりに 心が思い上がっていて。
月も入りぬるにや 七日ごろの月の入りは早く、夜半のうちに没する。「火焼屋かすかに光」る夕暮れの頃の訪問から、またたくまに時が経過。
うけばりたるありさま 「うけばる」足らぬところなく、完璧に満たされている様子。
まねびやらむかたなし 「まねぶ」事柄をその通りに語り伝える。/ 伝えようにも言葉が足らぬ。そのまま語り伝えるすべがない。
暁の別れはいつも露けきをこは世に知らぬ秋の空かな 暁の別れは、いつも涙の露に濡れていましたが、今朝はまたこれまで経験したこともないくらいに悲しい秋の空です。(小学館古典セレクション)/ 暁の別れはいつも涙に濡れがちなものだが、今朝はまた今まで覚えのないほどに悲しい色をした秋の空ですね。(玉上)
おほかたの秋の別れも悲しきに鳴く音な添へそ野辺の松虫 いったい秋の別れと言うだけでも悲しいのに、さらに悲しみをそそるかのように鳴く音を添えてくれるな、野辺の松虫よ。(小学館古典セレクション)/ ふつう秋に別れるというだけでも悲しいのに、その上に鳴く声を聞かせないおくれ、野辺の松虫よ。(玉上)
あいなく 他人事ながら。当事者でもない女房たちも・・・。
男は、さしも思さぬことをだに、情けのためにはよく言ひ続けたまふべかめれば 「男」は源氏。「よく言ひ続けたまふ」上手に次々と言う。/ 男はそれほどお思いなさらぬ事でも、恋の道にかけては、うまいことをおっしゃる。
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もどきもあはれがりも 非難も同情も。「もどき」非難。
長奉送使 (ちょうぶそうし)斎宮に随行して伊勢に下る勅使。その長官には参議または中納言から任ぜられる。
木綿 (ゆう)。楮(こうぞ)の繊維から紐のように作ったもので、榊につけて神事に用いる。これは神事にちなんだ趣向。
鳴る神だにこそ 「天の原ふみとどろかし鳴る神も思うなかをばさくるものかは(古今・恋四 読み人しらず)による。
八洲もる国つ御神も心あらば飽かぬ別れの仲をことわれ 八島を守っておられる国つ神も、もし思いやりがおありであるなら、尽きぬ思いの別れをしなければならぬ。この二人の仲についてどぅかお裁きください。(小学館古典セレクション)/ 大八洲をお守りなさる国つ神も、もし情があるなら心ゆかぬ別れをするわれわれの仲を考えてみてください。(玉上)/ 「ことわる」①判断する。判定する。批評する。 ②説明する。説き明かす。③前もって了解を得る。ことわる。
国つ神空にことわる仲ならばなほざりごとをまづや糾さむ 国つ神がもしも空からお二人の仲をお裁きになるのでしたら、あなた様の実意のないお言葉を、まず先におただしになりましょう。(小学館古典セレクション/ 国つ神がもし空から私たちの仲をお考えなされば、あなたの実のない言葉を何よりも先にお糾しになるでしょう。(玉上)
ただならず 幼女の斎宮としてではなく、恋の対象として意識が騒ぐ。
心にくくよしある御けはひなれば 御息所の美質。
申の時 午後4時から6時まで。
もののみ尽きせず 何もかにも、しみじみと感慨ぶかく・・・。
そのかみを今日はかけじと忍ぶれど心のうちにものぞ悲しき その昔のことを心にかけまいとこらえているけれど、心の中ではただ無性に悲しくてならない。(小学館古典セレクション)/その昔のことを今日は口に出すまいとこらえているのですが、心のなかでは悲しくてなりません。(玉上)
八省 八省院。太政官八省に属する官人たちが政務をとる役所。その正殿が大極殿。
出車 伊勢下向に従う女房たちの車。簾の下から袖口や裳などを出している車。「私の別れ」御息所の女房たちに通っていた殿上人も多かった。
振り捨てて今日は行くとも鈴鹿川八十瀬の波に袖は濡れじや この私を捨てて今日お立ちになったとしても、鈴鹿川を渡るころ、その八十瀬の川波にあなたの袖が、お濡れにならないでしょうか。(小学館古典セレクション)/ 今日の私を振り捨てていらっしても、鈴鹿川を渡るとき川瀬波に袖をぬらし、後悔はなさらないでしょうか。(玉上)
鈴鹿川八十瀬の波に濡れ濡れず伊勢まで誰れか思ひおこせむ 鈴鹿川の八十瀬の川波に私の袖が濡れるか濡れないか、いったいどなたがはるばると伊勢まで思いやってくださるのでしょうか。(小学館古典セレクション)/ 鈴鹿川の波に濡れるか濡れないか、誰があの遠い伊勢のことまで思ってくださるでしょう。(玉上)
ことそぎて書きたまへるしも 「ことそぎて」事をはぶく。簡略にする。
よしよししく 「よしよしし」[由由し]由ありげである。わけがありそうである。情趣がありそうである。
行く方を眺めもやらむこの秋は逢坂山を霧な隔てそ あの女たちの去り行く方に思いを馳せて眺めていよう、だから今年の秋は、霧よ、逢坂山を隔てないでおくれ。(小学館古典セレクション)/ あの一行の行く先を眺めてもいようよ。だから今年秋は逢坂山の辺りを霧も隠さないでくれ。(玉上)
人やりならず 人のせいにできずに。
心尽くしなること 「こころづくし」[心尽し]①さまざまに物思いすること。また、気をもませられること。②心をこめてすること。
十六にて故宮に参りたまひて 御息所は今三十歳で、十六歳のとき東宮のところへおいでになり、翌年斎宮がお生まれになり、二十歳で東宮に死別なさった。おそらく、亡くなるときも東宮であっただろうから、今上(桐壺院の第一皇子)が東宮になられたのはそれ以後のことであるはずだ。この方の亡くなられた後に、今上すなわち朱雀院が東宮になられたとすると、そのとき大将は四歳、朱雀院は七歳であった。そのとき、御息所は二十歳だというのだから、大将より十六歳年となる。だから御息所が今三十歳であれば、大将は十四歳ということになってしまう。「帚木」の巻では源氏は中将だが、八歳の童児となり、元服以前のこととなる。この矛盾については古来からいろいろ説かれているが、まだ合理的な説明はついていない。・・・昔の読者も、そうした矛盾に気がついて、物語に記されている事柄を整理し、この物語の年表のようなものを作り上げた。それを年立(としだて)という。・・・年立には、大きく分けて二つあって、中世の読者を代表する一条兼良の作ったものと、近世になって本居宣長の作った『源氏物語年紀考』に代表されるものとがあり、前者を旧年立、後者を新年立と呼んでいる。どちらも主人公の年齢を基準にして整理したものであるが、旧年立では、このとき大将は二十二歳、新年立では、k二十三歳である。(玉上)
斎宮は、十四にぞなりたまひける・・・ 斎宮は十四におなりになった。きれいな方であるうえに、錦繍(きんしゅう)に包まれておいでになったから、この世界の女人とも見えないほどお美しかった。斎王(いつきのみこ)の美に御(み)心を打たれながら別れのおん櫛(くし)を髪にさしてお与えになるとき、帝(みかど)は悲しみに堪えがたくおなりになったふうで悄然(しょうぜん)としておしまいになった。(与謝野晶子訳)
斎宮は十四におなりでした。たいそう美しくていらっしゃいますのを、麗しく粧(よそお)ってお上げなされて、物凄いばかりにお見えになりますので、お上の御感動もなみなみでなく、別れの御櫛をさしてお上げになります時に、そぞろにあわれを催し給うて御落涙遊ばすのでした。(谷崎潤一郎訳)
斎宮は十四におなりでした。生まれつきお可愛らしいのを、この上なく華やかに着飾っていらっしゃいますので不吉なほどお美しく拝されます。帝は並々でなく御心を動かされて、儀式の別れの御櫛を挿しておあげになる時は、たまらなく胸にせまり、涙をお落としになるのでした。(瀬戸内寂聴訳)
 斎宮は、十四歳におなりであった。とてもかわいらしくいらっしゃるご様子を、立派に装束をお着せ申されたのが、とても恐いまでに美しくお見えになるのを、帝は、お心が動いて、別れの御櫛を挿してお上げになる時に、まことに心揺さぶられて、涙をお流しあそばされた。(渋谷栄一訳)
別れの櫛 御櫛の儀のこと。帝が斎宮の額に黄楊(つげ)の小櫛を挿して「京の方におもむきたまうな」と言う。斎宮が京に向かうことは御代がわりのときだから、それを禁ずる言葉。
飽かぬほどにて 言うことを言い尽くしたという気がまだせぬ程度のころに。まだ言いたい気がしている時に。
いとものはかなき御ほどなれば 東宮はこのとき5歳。
急にさがなく 「急に」性急な。「さがなく」性格がよくなく。意地悪で。
世の中とぢむる 一年の終わりの意に、桐壺院の時世の終わりの意を込めた表現。
蔭ひろみ頼みし松や枯れにけむ下葉散りゆく年の暮かな 木蔭が広いので頼りにしていたこの松も枯れてしまったのだろうか、今年の暮れは下葉も散ってゆくなあ。(玉上)/ 木陰が広いので、お頼りにしていた松が枯れてしまったのだろうか、その下葉が散ってゆく、院がお亡くなりあそばして、ゆかりの人々の散り散りになってゆく年の瀬であるよ。(小学館古典セレクション)
さえわたる池の鏡のさやけきに見なれし影を見ぬぞ悲しき 冴えきっているこの池の面は鏡のように澄んでいる、だのに、いつも見ていた人の姿の見えぬのが悲しい事です。(玉上)/ 一面に凍っている池の面が鏡のようにさやかに澄んでいるのに、お見なれ申した院の面影を拝見することのできないのが悲しい。(小学館古典セレクション)
年暮れて岩井の水もこほりとぢ見し人影のあせもゆくかな 年も暮れて岩井の水もすっかり氷に閉ざされて、これまで見えていた人の姿もきえてゆきますこと。(玉上)/ 年が暮れて岩井の水も凍りついてしまって、今まで見なれていた人影も、しだいにまばらになってゆきますこと。(小学館古典セレクション)/ 「あせ」(「浅す」の連用形)で「人かげ」が減るの意。
除目 官吏の任命式。ここは春に行われる県召(あがたぬし)、地方官(国司)の任命。
年ごろ 桐壺帝が退位して院であった時期。退位後も政治的実権を失わず、源氏も庇護されていた。
御匣殿 朧月夜のこと。
尚侍 (ないしのかみ)尚侍司の長官(定員2名)で、もとは従五位相当の女官であったが、この時代には女御・更衣に準ずる地位となって帝寵を受けるものもあった。尚侍司は天皇に常侍して奏請や伝宜などをつかさどる役所。
やむごとなくもてなし 高貴な方らしくふるまう、意。///
いちはやくて 威力のあるさまの「いち」と、鋭い意の「はやし」 が合成された語。恐ろしくきびしい意。/ 性格がせっかちて激しく勝気なところがあって。
すさまじき心地 「すさまじ」①おもしろくない。興ざめだ。しらけている。 ②寒々としている。殺風景だ。情趣がない。③冷たい。寒い。 ④ものすごい。激しい。ひどい。/ ここでは①の意味だろう。
引きよきて 「ひきよく」[引き避く]避ける。
思しつめたることども 「思い詰む」思い詰める。深く悩む。/ 「おぼしつむ」は「思ひ詰む」の敬語、思いの切迫する意。「思ひつ(詰)む」は、思いを抑えて切迫した 気持ちになる。文末を推量形で結ぶ/ 「根のもったことども」は名訳。
kikoetuketamaisi">聞こえつけたまひし 「きこえつく」は「いひつく」(頼む、託す)の受手尊敬。/ 「言ひ付く」言い寄る。言い寄って親しい間柄になる。①頼む。託す。②告げ口する。 ③言いなれる。
そばそばしう よそよそしい。
いたつききこえたまふ 「いたづく」骨を折る、苦労する。転じて大切にする。
嫡腹 正妻の子。正妻の子を限りなく幸せにと北の方は願っているが、思うようにいかない。
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あはれに思したれど 源氏を心にかけて大切(あはれ)にお思いだけれど。源氏を兄と慕っているけれど。
心からかたがた袖を濡らすかな明くと教ふる声につけても 自分から求めてあれやこ0れやと涙に袖が濡れることです。夜が明けるのを教える声を聞くにつけても、あなたがこの私を飽きるというふうに聞こえて。(小学館古典セレクション)/ 『あく』と教えるあの声、夜は明け、あなたはあきていられると教えるあの声を聞くにつけても、自分から選んだ道ながらあれこれと泣かれてなりません。(玉上)/ 自分からあれこれと涙で袖を濡らすことですわ、夜が明けると教えてくれる声につけましても(渋谷)/ 人のせいでなくわたしの心のせいで、それやこれやと何かにつけて、私は袖を濡らしますよ、夜が明けると教える声を聞くにつけても。別れが口惜しくつらくて。(岩波大系)「明く」に「飽く」をかけている。
嘆きつつわが世はかくて過ぐせとや胸のあくべき時ぞともなく 嘆きを繰り返しながら、わが世をこうして過ごせというのだろうか。夜は明けても、胸の思いのあけるときがなくて。(小学館古典セレクション)/ 身の上を嘆きながら一生こうして過ごせとおっしゃるのですか。夜は明けますがこの胸のあく時とてありませんのに。(玉上)/ 嘆きながら一生をこのように過ごせというのでしょうか胸の思いの晴れる間もないのに。(渋谷)
もどききこゆる 「もどき」非難。咎め。
わが心の引くかたにては 個人的な気持ちとしては。自分の心が引く方面、勝手な気持ちとしては。
いたうやつれて 「やつる」人目につかぬように粗末な衣服をまとうこと。
もて離れつれなき人 藤壺のこと。
うひうひしく 初めてのように。/div>
この憎き御心のやまぬに 桐壺を思慕する源氏の恋心。
ともすれば御胸をつぶしたまひつつ (藤壺が)びっくりする、肝をつぶす。
いささかもけしきを御覧じ知らずなりにしを 桐壺院が二人の密通に全く、気づかなかったこと。
まねぶべきやうなく 筆にも口にも表しようがなく。
宮は、いとこよなくもて離れきこえたまひて 宮はあくまでも冷静をお失いならなかった。(与謝野晶子)/ 宮はいよいよそっけなくおあしらいなされて。(谷崎潤一郎)/ 宮はまったく思い離れた態度をお崩しにならないで。(円地文子) / 中宮はいよいよこの上もなく冷たくおあしらいになり。(瀬戸内寂聴)/ 藤壺のほうでも、そこは心得てぴしゃりと冷ややかに応待をする。(林望)/ 宮はとても強くすげない態度をおとり申しなさって。(玉上)/ 宮は、まことにこの上もなく冷たくおあしらい申し上げなさって。(渋谷)<(渋谷)/ 「聞こえる、聞こゆ」は、「言う」の謙譲語として使われるが、それ以外に「他の動詞について、その動詞の動作の対象を敬う謙譲語。・・・申しあげる。? // 宮はこの上なくよそよそしい態度を通して。(管理人)ここの「きこえたまいて」は「言う」の謙譲語ではないだろう。他の動詞の連用形に付いて、その動作をなす主体が対者より身分の低いことを表す謙譲語。ある動作をすることか?その謙譲語?「申す」「申し上げる」は、「言う」ではなく、「する」の謙譲語?前に動詞があれば、その動詞の動作を「する」意味の謙譲語か?
まがへば 「まがう」[紛う]入り乱れる。まざって区別がつかなくなる。
かたはら目 傍らから見たお姿。横顔。
おぼえたまへるかな 「おぼえる」③似る。
ねびまさりたまひにけるかな 「ねびまさる」年齢よりも大人びてみえる。年齢とともに美しくなる。年をとって一層立派になる。
見だに向きたまへかし せめて振り向いて下さい。
ここら世をもてしづめたまふ御心 「世」源氏の藤壺への恋心。「ここら」長年。長年抑えていた恋する心を。
心づきなし 気に入らない。心がひかれない。
逢ふことのかたきを今日に限らずは今幾世をか嘆きつつ経む あなたにお逢いすることの難しさが、今日に限らず後々いつまでも続くのでしたら、私はこれから幾かえりの世を生まれ変わって、この嘆きを繰り返しながら過ごすことになるのでしょう。(小学館古典セレクション)/ お逢いすることの難しさが今日でおしまいでないならばいく転生にわたって嘆きながら過すことでしょうか。(渋谷)/ 「御ほだしにもこそ」源氏が藤壺ゆえに現世執着の罪に悩むことは、相手の藤壺にとっても罪障となり往生の妨げになろうとする。「ほだし」あしかせ。自由を拘束するもの。
長き世の恨みを人に残してもかつは心をあだと知らなむ 長く幾世にもわたるお恨みをこの私の上にお残しになるとしましても、一つには、ご自身のお心にまことがないからなのだと知っていただきたいのです。(小学館古典セレクション)/ 未来永劫の怨みをわたしに残したと言ってもそのようなお心はまた一方ですぐに変わるものと知っていただきたい。(渋谷)
いづこを面にてかは どこを顔にして。どの顔さげて。何の面もあって。
いとほしと思し知るばかり 相手(藤壺)からの憐憫を待つばかり。
院の思しのたまはせしさまの、なのめならざりしを思し出づるにも 権勢家の後見がない春宮の支えとして藤壺を中宮に立てた桐壺院の処置を、深い配慮であったと回想する。藤壺が古参の大后を越えて中宮になったのを、大后は今も恨み続けている。
なのめならざりしを 「なのめなり」一通りの。普通の。
戚夫人 (せきふじん)。漢の高祖は呂后(りょこう)を顧みず妾の戚夫人を熱愛し、その子趙王如意を皇太子にとさえ思った。高祖崩御後、呂后の子で心の柔和な孝恵が即位し、母呂后は孝恵のとめるのも聞かず戚夫人と趙王を虐殺して積年の恨みを晴らした。
おほかたの御とぶらひは ///
思し屈しにける 気が滅入る。落ち込む。「屈し」気がふさぐ。滅入る。
宮は 春宮。このとき六歳。
うちまもりたまひて 「まもる」は凝視する。
夜居の僧 加持祈祷のために終夜詰めている僧。
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公開日2018年//月//日