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源氏物語  鈴虫・注釈

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38 鈴虫

蓮葉を同じ台と契りおきて 露の分かるる今日ぞ悲しき 来世には極楽の同じ蓮台に乗ろうと約束しておきながら、今は蓮の葉に置く露のように別々に暮らすのがかなしい。
隔てなく蓮の宿を契りても 君が心や住まじとすらむ 共に仲良く蓮の花に住みましょうと約束しても
あなたの心は一緒ではないでしょう。 
例の御心はあるまじきことにこそはあなれ いつもの困った御心癖は、とんでもないことだろうと。女三の宮の思い。/ 例の好き心は(尼の身には)とんでもないこと。
人目にこそ変はることなくもてなしたまひしか、内には憂きを知りたまふけしきしるく よそ目にこそ以前と変わらぬお扱いではあったが、内々は、あの嫌なことをご存じのそぶりがはっきりと分かって。
いかで見えたてまつらじの御心にて、多うは思ひなりたまひにし御世の背きなれば、今はもて離れて心やすきに もうどうしても源氏にお逢いすまいというお気持ちご決心なさった出家ですので、今は夫婦の繋がりも切れて、気がねせずにいられるのに。
阿弥陀の大呪 無量寿如来根本陀羅尼。「陀羅尼」は、梵音を漢字に写し取ったもの。そのい長いものが大呪という。一度誦すれば、もろもろの罪障を滅し、一万遍になれば、不廃忘の菩提心三魔地を得、命終わる時、阿弥陀仏の来迎をうけ、極楽往生するという。「念誦」は、心に仏を念じ、口に仏名、経文などを唱えること。
おほかたの秋をば憂しと知りにしを ふり捨てがたき鈴虫の声 秋という季節はつらいものと、よく分かったのですが、鈴虫の声にはまだ心引かれます。/ 下は、源氏はわたしに飽き(秋)なされたと知ってしまった、と恨む心である。
心もて草の宿りを厭へども
なほ鈴虫の声ぞふりせぬ
ご自分から、この家をお捨てになったのですが、今も鈴虫の声は変わらず美しく聞こえます。「ふりせぬ」古くならない。女三の宮を鈴虫にたとえた。なお思いきれぬ気持ちを訴える。 
雲の上をかけ離れたるすみかにも
もの忘れせぬ秋の夜の月
 宮中を離れてしまった住処にも忘れずに中秋の名月は照り渡っております。
何ばかり所狭き身のほどにもあらずながら、今はのどやかにおはしますに、参り馴るることもをさをさなきを、本意なきことに思しあまりて、おどろかさせたまへる、かたじけなし 大して窮屈な身分でもないのだが、ご退位の後はお気楽にお過ごしなのに、親しく参上することもめったにないので、(冷泉院が)不本意なことに思し召すあまり、お便りを下さったのは、もったいない。
月影は同じ雲居に見えながら わが宿からの秋ぞ変はれる 月は昔に変わらぬ光に輝いていますが、私の方がすっかり変わってしまいました。 
異なることなかめれど、ただ昔今の御ありさまの思し続けられけるままなめり 何ほどのこともないご返事だが、ご在位の昔に変わる冷泉院のご様子に、何かと感慨を催されてのお作であろう。
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公開日2020年//月//日