阿含経を読む

はじめに

イエス・キリストのことを知るのは、比較的容易である。聖書を全編読むのはかなり忍耐がいるが、その必要はない。福音書を読めばよいのである。福音書は四冊(マタイ、マルコ、ルカ、ヨハネ)あって、それぞれそんなに大部のものではない。そこにイエスの言行は全部書いてある。私がよく読むのはマタイによる福音書だ。

仏教は膨大な経典があって、素人にはどこから手をつけてよいか容易には分からない。釈迦(ゴータマ仏陀)その人は何を説いたのかを知るには、何を読んだらよいのか、それを知るのに大分時間がかかった。阿含経を読めばよいのである。

阿含経は一冊の経典の言いではない。経典群の総称である。南伝仏教あるいは上座部(テーラーワーダー)と呼ばれ、紀元前三世紀半ば頃にインドからスリランカに伝えられ、その後十二世紀以降にタイ・ミヤンマー・カンボジア・ベトナム・ラオス等東南アジアに伝えられて今日に至っている仏教の流れである。そこでは阿含経(アーガマ経典、またはパーリ五部)と呼ばれる経典群を保持し、それのみを依拠としている。ここに仏陀生前の教えが当時に近い形で残っているという。和訳で読める南伝大蔵経が出版されております。

ここでは『阿含経典』(第一巻〜第六巻)増谷文雄訳(1979年初版発行 筑摩書房)を典拠として読んでゆきます。この本は当初四巻でもって完結を予定して書かれました。その中におよそ四百の経が紹介されています。碩学の選んだエッセンスなので、これで充分と思いますが、その後二巻が追加され、合計六巻になっております。先日、東京都文京区本郷五丁目(東大赤門前)の萬葉堂書店に行って、この本を買ってきた。但し第五巻が欠けているが、図書館にはあるだろう。私が感興を得た言葉あるいは釈迦が実際に語ったと思われる章句を、ここに挙げてゆきます。それによって釈迦が何を語ったのか、何を説いたのか理解しようとするものです。

お楽しみに。

更新2007年4月30日