何ありて
南伝 相応部経典38-4 何在
漢訳 雑阿含経 18-1 難等かようにわたしは聞いた。ある時、長老サーリプッタ(舎利弗)は、マガダ(摩掲陀)の国のナーラカ(那羅迦)という村に住していた。その時、✽ジャンプカーダカ(閻浮車)なる遊行者が、長老サーリプッタを訪ねてきて、たがいに会釈をかわし、親愛にみちた慇懃なる談話をまじえて、やがてその傍らに座した。傍らに座したジャンプカーダカは、長老サーリプッタにいった。「友サーリプッタよ、あなたは何の利ありてか、沙問ゴータマ(瞿曇)について修行するのであるか」「友よ、わたしは、苦を知悉せんがために、世尊について修行するのである」「では、友よ、その苦を知悉する道があるであろううか。そこにいたる方法があるであろうか」「友よ、その苦を知悉する道がある。そこにいたる方法があるのである」「では、友よ、その苦を知悉する道とはなにか。そこにいたる方法とはなんであろうか」「友よ、かの聖なる八支の道こそは、その苦を知悉する道である。それは、すなわち、正見、正思、正語、正業、正命、正精進、正念、正定である。友よ、これがその苦を知悉する道であり、そこにいたる方法なのである」「友よ、その苦を知悉する道は、まことに善い。そこにいたる方法は、まことに素晴らしい。友サーリプッタよ、それはまた勤めはげむに足る」注解この経の題目は「何ありて」(Kimattha=what advantadge)とある。「なんの利益ありて」、沙門ゴータマについて修行するのか、と問われたサーリプッタは、それは「苦を知悉知せんがためだ」と答えているのである。✽ジャンプカーダカ(閻浮車) 人名。遊行者であって、また普行(ふぎょう)沙門などとも訳する。彼は、外道であって、仏教者ではなかったが、サーリプッタ(舎利弗)と同じマガダ(摩掲陀)国のナーカラ(那羅迦)村の出身であって、サーリプッタと親交があり、しばしば、サーリプッタを訪れて問いを呈した。それに対して、サーリプッタは、いつも簡明にして正確なる答えを与えた。ここに集録する諸経はその記録であって、仏教の基本的概念を知るためには、きわめて貴重な資料である。