今月の言葉抄 2007年12月

ロダンの考える人

座禅の仕方は大体以上の如くですが、ところでこの座禅の姿勢こそは、まったく東洋の発見した、不思議な姿勢であるということができましょう。というのは、この座禅の姿勢は、小さな人間的思いを投げ出すのに、もっとも適した姿勢だからです。

その点ロダンの彫刻に「考える人」というのがありますが、この「考える人」の彫像と座禅の姿勢を比較してみるとよくわかります。あれは「考える」といえば体裁がいいけれど、じつは妄想を追う姿勢なのです。胴体も曲がり、手足も曲がり、首筋も手先も、足の指先まで曲がっています。あのように身体が曲がっているのは血液が停滞する姿勢であり、ことに頭の血液が停滞しますから、妄想にとりつかれて、これから離れることができない姿勢です。これに反し座禅の姿勢は腰、胴体、首、頭のすべてをのばします。そして足はがっちり組んで、その上に腹をゆったりのせる気分なので、血液はたっぷり腹の方へ循環し、頭から血が下がる姿勢です。頭の血が下がればこそ、すべての停滞なく、ノボセが下がり、妄想幻影が追えなくなります。それゆえ正しい座禅をするとは、ただこの正しい座禅の姿勢にすべてをまかせきってゆくことです。

『座禅の意味と実際』内山興正著 平成15年 大法輪閣

更新2007年12月2日