物理の窓

光は粒子のように振る舞う

1 光電効果 
2 光は粒子だ
3 電子と光子の衝突
4 波なのか、粒なのか
5 太陽電池のしくみ この頁

太陽電池のしくみ

光電効果の応用はまだまだいくらでもある。たとえば、太陽電池もそうだ。
周知のごとく、電池にはプラス側とマイナス側がある。プラス側は高い電位でマイナス側は低い電位にあり、 この二つの電位の差(電位差)が電圧である。電池は常に一定の電位差(電圧)を保つ装置であると言えよう。
ちょうど水が高いところから低いところへ向かって流れるように、電流も高い電位(プラス側)から低い電位(マイナス側) に向かって流れる。電線で電池のプラス側とマイナス側をつないでやると、電線には電流が流れる。さらにプラス側とマイナス側の間に 電球やラジオなどをつなぐと、それらの装置は電流が流れて作動する。
ここで、いかなる物体も、自然の状態では電気的に中性であることを強調しておきたい。なぜなら原子が電気的に中性である からである。一個の原子には同数の陽子と電子がある。符号が逆であっても、電子の電荷と陽子の電荷はまったく等しい。 プラス電荷とマイナス電荷は相殺されてプラスマイナスゼロになっている。
金属では、一個の原子から電子が一個もぎ取られており、もぎ取られた電子は原子からの束縛から離れて金属内を自由に 動きまわっている。いわゆる自由電子である(実際の理論、すなわち量子力学においては、自由電子とは言わずに「伝道電子」と 言っている)。もともと原子は電気的に中性であったのだから、電子(マイナス電荷)を失った原子は、電気的にプラスになる。
したがって、金属内の原子はすべてプラスに帯電している。しかしそれでも金属全体としては、プラスの全電荷(原子) とマイナスの全電荷(電子)は等しい。プラスの原子は振動することはあっても、自由電子のようにあちこち動き回ることはない。 原子は規則正しく金属内で配列されている(図参照)。これが金属の特徴である。

金属内の状態
金属内の原子の状態  実際には平面ではなく、三次元の格子状になっている。

光電効果によって金属内から電子が飛び出すと、もともと中性(総電荷ゼロ)であった金属は、マイナス電荷(電子)を 失うことになるので、金属全体としてはプラスに帯電したことになる。
図が太陽電池の概略図であるこれはあくまで概略図で、実際の太陽電池では半導体が使われている)。中が真空になっている ガラス管内に、二つの電極AとBが設置されている。AとBは違った金属でできているが、ともに電気的には中性である。ガラス管 には、一箇所穴のあいた不透明な布がかぶせてある。光はこの「窓」を通してしかガラス管内に入り込めず、電極Aだけに光が 当たるようになっている。

太陽電池の仕組み
太陽電池のしくみ

さて電極Aは金属だから、光が当たると光電効果が起こる。すると、電極Aから多数の電子が飛び出る。飛び出た電子は スピードを持っているので、反対側の電極Bのほうに向かって走っていく。このとき電子を失った電極Aはプラスに帯電している。
図に見られるように、電極Aは電線(これも金属)によってガラス管の外側にある金属板aにつながれている。つまり 左側の三つの金属(電極A、電線、金属板a)は、一つの金属体を成す。光電効果によって電極Aが電子を失うと、三つの金属体 全体がマイナス電荷不足となるので、ガラス管の外側の金属板aもプラスに帯電するのである。
一方、電極Bは電極Aから飛び出た電子(マイナス電荷)を受け取るので、電極Bはマイナス過剰となる。したがって、左側 と同じ理屈で、ガラス管の外側にある金属板bはマイナスに帯電することになる。
要するに、光が窓を通して電極Aに当たって多数の電子をたたき出し、それらの電子が電極Bに吸収されるかぎり、ガラス管の 外にある金属板aは常にプラスに帯電し、金属板bはマイナスに帯電していることになる。
では、このままの状態でいつまでも光電効果がつづくとどうなるのか?それぞれの金属板にどんどんプラスとマイナスの 電荷がたまっていくのだろうか?
電極Bがマイナス電荷(電子)を受け取ってマイナスに帯電する。すると後からやってきた電子は、すでにマイナスに帯電 している電極Bから電気反発力を受けるようになる(マイナスとマイナスとの間の反発力)。電極Bのマイナスの電荷量が多く なってくると、最終的には電極Aから飛び出た電子は、もはや電極Bに達することができなくなるのだ。
この時点で、外側の二つの金属板に現われる過剰のプラス電荷とマイナス電荷の量は一定となり、それ以上は増えなくなる。 こうなるとガラス管の外側にある二つの金属板の間に一定の電圧が生ずる。これは電池とまったく同じ状態である。二つの 金属板の間に電線で豆電球をつなぐと、電流が流れて豆電球は光る。
しかし、豆電球に電流が流れた瞬間、金属にあった電子が流れてしまうので、二つの金属板の間に発生した電圧も下がって、 豆電球はだんだん暗くなってしまう。でも、豆電球は消えない。電流が減ろうとすると、そうはさせじとばかりに光電効果が 活発に起こって、電極Aからすかさず多量の電子が飛び出し、電流を増やそうとするのである。光が電極Aに連続的に当たるかぎり、 電圧も電流も減ることはない。
電極Aから電子がたたき出されても、これらの電子は豆電球を通して「回路」を循環するでけなので、全体の電子の数が 減ることはあり得ない。これが太陽電池の原理である。太陽電池は光が電極Aに当たってさえいれば、普通の電池のように 「減る」ことはない。太陽電池が半永久的な電池と言われるゆえんである。

― 完 ―

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更新2009年1月11日