今月の言葉抄  2006年4月

光合成細菌の出現

この世に存在するものは、一般に時間と共に崩壊の方向に向かう。ところが生きているものは、時間を経ても 秩序を保ち続ける。秩序を保つためにはエネルギーが必要である。部屋の中をきちんとしておくためには、 整理整頓という仕事が必要なように、細胞のなかを維持するためにも仕事(化学反応)が必要であり、 仕事をするためにはエネルギーが必要である。生きるため、増えるためには、エネルギーがなくてはならない。このエネルギー をどのように効率的に得るかが生き残る鍵であり、生存競争に勝つ手段の一つでもある。

最初に細胞が生まれてから、一億年ほどたったところで、環境のなかにある炭酸ガスや窒素を利用して栄養物をつくる原核生物が 出現した。太陽から降りそそぐ光のエネルギーを利用して、炭酸ガスと水から糖類をつくる反応を光合成というが、細胞のなかで そのような反応を行なう細菌が一億年の間に生まれたのである。窒素を利用して栄養物をつくる細菌は窒素固定細菌と呼ばれている。

このようにしてつくられた栄養物を小さい分子に壊すときにはエネルギーが得られる。私たちはエネルギーを得るために 食物を食べるが、植物は、光合成によって栄養物を自分でつくり、自給自足しているのである。

初期の光合成は、硫化水素の水素を利用しており、効率も悪かったが、やがて水の水素と炭酸ガスを使って効率よく光合成を おこなう細菌が進化した。このような細菌はシアノバクテリアとか藍色細胞と呼ばれている。水は水素原子二個と酸素原子一個が 結合した分子であるので、この水素を光合成に使うと、酸素が廃棄物として放出される。その酸素は次第に増えて、 地球のまわりの大気層を満たしはじめた。

(「第4章 死を考えるための生命の歴史 光合成細菌の出現」から)
『われわれはなぜ死ぬのか』(草思社)柳澤 桂子著

ぼくの理解はせいぜいこの辺までだ。この文章を理解するだけでもかなりの予備知識が必要です。著者の筆力は てきぱきとして速い。このあと中間を飛ばし、最後の方を走り読みした。科学的な知識を自分の人生に適用させるのは、難しい。 心情の入り込む余地がないからだろう。われわれの生命は36億年続いて今に至っており、生殖細胞のなかの DNAはさらにこの後も連綿として、死ぬことなく受け継がれてゆくという。死ぬのは体細胞だそうです。(管理人)

更新2006年4月24日